天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

弁膜症 ベトナムでも日本と同じ時間・内容の手術ができた

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 8月中旬に訪れたベトナムでは、冠動脈バイパス手術のほかに心臓弁膜症の手術を3例行いました。

 いまのベトナムの社会環境は30~40年前の日本を見ているかのような印象で、公衆衛生がまだ不十分なため、リウマチ性の心臓弁膜症が多いのです。日本では昭和40~50年ごろに多かった病気です。リウマチ性といっても「関節リウマチ」とは無関係で、溶血性連鎖球菌への感染によって起こる「リウマチ熱」の炎症が心臓の弁膜まで及ぶことで発症します。数年から数十年かけて弁が硬くなって機能しなくなり、狭窄や閉鎖不全で血液の循環がうまくいかなくなります。

 弁膜症の1例目の手術は、首都ハノイ市にある国防軍医科大学付属103病院で実施しました。軍関係者だけでなく一般の患者さんも扱う教育病院で、患者さんの数も多く活気がありました。ただ、手術室の造りが古く、日本でいえば40年くらい前の手術室といった雰囲気でした。施設のトイレも古びていて、病院全体に消毒液のにおいが漂っている……かつての日本の結核病棟のようなイメージです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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