天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

弁膜症 ベトナムでも日本と同じ時間・内容の手術ができた

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 この方式は、アメリカのクリーブランドクリニックに似通っていて、こちらはアメリカの軍医総監が立ち上げた病院です。ちなみに、日本の軍医総監が設立した病院が順天堂医院です。

 その病院では、僧帽弁閉鎖不全症の弁形成術を行いました。しかもその患者さんは、ベトナムでは比較的少なく、日本やアメリカで多い僧帽弁の逸脱症で、僧帽弁を支えている腱索(弁と左心室の壁をつないでいる)が断裂している状態でした。特にこのケースに該当する僧帽弁前尖が壊れた患者さんは、弁膜症患者の10~15%くらいしかいないため、一般的には弁形成に高い技術と経験が要求されます。

 ただ、私自身は多くの症例を完治させてきた経験から困難だとは思っていません。手早く人工腱索を使って3本の腱索を再建し、劣化した弁の周囲にリングを装着して補強する処置を行いました。これで、血液の逆流は一切なくなります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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