Mさんはとっさに「俺は大丈夫だよ」とだけ答えましたが、電話が終わったら愕然として、しばらく座り込んでしまいました。
■医師から何を説明されたか、どう答えたか分からない
ぼーっと何も手につかないまま3週間が過ぎた頃、MさんはようやくGクリニックに行き、G医師にこれまでの経過を話しました。F医師からの紹介状には、「外科医は、もしもがんが小さくなれば手術可能かもしれない。しかし、ご本人は手術、放射線治療、抗がん剤治療は希望されませんでした」と書いてありました。
それを目にしたG医師から「抗がん剤治療は希望されなかったのですか?」と尋ねられ、Mさんは打ち明けました。
「実はF先生からあと6カ月の命だと言われた後、頭が真っ白になってしまいまして……。その後、何を説明されたか、どう答えたか分からないのです。F先生は『抗がん剤治療は人間の尊厳をダメにする』と娘に言ったようです」
がんと向き合い生きていく