天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

検査による予後予測から「予防的手術」を実施するケースも

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 心臓の手術は一時的に心臓の膜を切開し、再び縫って閉じる処置をします。縫い合わせた部分は、回復する過程でどうしても癒着を起こすため、心臓の拡張機能が制限されてしまいます。それによって、左心耳も含めた心臓内では血液によどみができて血栓が形成されやすくなり、脳梗塞の原因になるのです。

 予防のため術後に抗凝固剤を服用する場合もありますが、左心耳切除術のほうが40%以上有利に脳梗塞を予防することがわかっています。

 欧州では、脳梗塞予防として左心耳に対するさまざまな治療が行われていて、研究も進んでいます。左心耳だけを研究する学会もあるほどです。私自身は学会には加わってはいませんが、今後は当院で左心耳を研究しているメンバーを派遣して、より積極的に関わっていく予定です。

 われわれは、まだ多くの外科医が二の足を踏んでいた8年前から左心耳に着目し、冠動脈バイパス手術を実施する際は、すべて左心耳閉塞術や左心耳切除術を行ってきました。そのため、左心耳に関する基礎データをたくさん持っています。学会に参加することで、そのデータをさらに有効活用できればと考えています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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