後悔しない認知症

「危ないから」「病気だから」と行動を制限してはいけない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 そのためには、仕事を続けることはもちろん、家庭内の作業、孫の世話。人との交流、あるいは外出などがきわめて有効だ。簡単に言えば「脳を休ませない」ということ。使わないときに脳の萎縮が進むかどうかについてははっきりとした証拠はないのだが、臨床的には機能低下は確実に起こるということはいえる。

 親が認知症と診断されると「できないから」と仕事をやめさせたり、「危ないから」あるいは「世間体があるから」と子どもが家の中に閉じ込めてしまったりするケースがある。これは脳への刺激が減ることで萎縮を早める行為といっていい。

 かつて100歳を越えて人気者になった「きんさんぎんさん」。あの双子の姉妹にも明らかに認知症の症状はみられたが、マスコミに登場してさまざまな人たちと交流することを楽しんでいるように見受けられた。家族が「親のできないこと」に悲観せずに、親の残存能力を生かしながら、機嫌よく晩年を過ごさせた格好の例だろう。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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