がんと向き合い生きていく

抗がん剤治療で数カ月長生きすることに意味があるのか?

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 そんなBさんに私の考え方を伝えました。

「抗がん剤治療をやるかやらないかは、もちろん本人が決めることです。延命の意味があるかないか、これも本人の考え方次第と思います。結果はどうなるかは分かりませんが、私は抗がん剤治療を勧めます。あなたに本当に効くかは分かりません。でも、延命効果が科学的に証明されているのに、やらないのはもったいないと思います。70年間生きてきたと言われますが、これからの人生に何が待っているか分かりません。延命の意味は、たとえ1年でも生きていてこそ何かが出来る、何かを味わえるチャンスがあるのです。つらいこともあるでしょうが、楽しいこともきっとある。私なら、『生きていてよかったと思える時がある』と、そう希望を持って生きていたいと思います」

■生きていてこそ幸せを感じるチャンスがある

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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