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【鯛のかぶと煮】調味料を控えてビタミンB1で疲労回復

春の鯛は旬の時期。“桜鯛”と呼ばれる(C)日刊ゲンダイ
目の周囲の必須脂肪酸し血圧を下げて心臓疾患を防ぐ

 私は1年のうち、かなりの日数を、客員教授を務める米国NY・ロックフェラー大学で過ごしている。今やNYではスシやサシミはごく普通の人気メニュー。とはいえ、食材としての魚は(グリルしたものであっても)あくまで切り身として食べるものであり、頭や目玉がついたままだと文字通りギョッとする西洋人は多い。しかしこの目玉つきの頭(つまり、かぶと)にこそ美味と栄養が詰まっている。

 春の鯛は産卵前の旬の時期にあたり、特に桜鯛と呼ばれる。おいしいのはくちびるの肉、目の下のくぼみに詰まった頬の肉、それから裏返して硬い頭蓋骨の隙間に入っている細い身の部分である。そして目の周囲。ここにはドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)がたっぷり含まれている。これらはサプリメントとしても市販されている必須脂肪酸で、ヒトに不可欠な栄養素。脳細胞、網膜、精液などの主要成分であり、血圧を下げ、心臓疾患を防いでくれる。昔から丁寧に魚を食べてきた日本人の食文化の知恵を味わいたい。

(福岡伸一)

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