上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

医学部に入学する時点から国が丸抱えして管理するのも一案

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 医学部への門戸を広げたことに加え、さらに地域医療支援の名目で「地域枠」や「地元枠」という学力の低い学生が入りやすい制度も導入された結果、近年は医師国家試験の合格率が90%割れを起こす事態もまれでなくなっています。9600人程度の同学年国家試験受験者のうち約1000人が不合格となり、教育経費が年間約1000億円も空転した形になっているのです。

 この無駄遣いに異を唱えるのを私以外に聞いたことがありません。それぞれが微妙なしがらみを持つ状況から、国家試験合格率が高い大学も批判の声をあげにくい状況になっているのです。

■医師は公費で育ててもらっているという意識を持たせる

 この事態をそのままにしておくと、結果的に医学生の定員制限という医師数を根本的に減らす政策を簡単に誘導してしまうことになります。病院が病床利用率の低迷を防ぐためにベッド数を減らすのと同じ考え方です。現在進行形で行われている働き方改革や地方国立大学付属病院でのますますの医師不在によって、地方医療サービスの低下には歯止めがかけられず、福祉の切り捨てにつながるのは必至な状況になってきています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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