天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

医師の考えを押し付けて透析中止に誘導するのは許されない

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 先日、東京・福生市の公立福生病院で医師が患者に人工透析をやめる選択肢を示し、中止を選んだ女性が死亡した事例が発覚しました。ほかにも、同様に透析を受けない選択をした患者は20人に上り、複数人が死亡したとも報道されています。

 福生病院側は「悪意や医療過誤があった事実はない」とコメントしていて、東京都と日本透析医学会は、医療行為が適切だったかどうかを調査しています。

 人工透析は、腎臓の働きが衰えて血液のろ過が十分にできなくなった患者さんの血液を浄化するための治療です。

 中止した場合、血液中に老廃物が蓄積して尿毒症を起こすなど命に関わります。それだけに、仮に医師が透析を中止する方向に患者さんを“誘導”していたとしたら大問題です。

 日本のいまの透析医療はとても優秀です。ダイアライザー(ろ過装置)が使い捨てになるなどして安全性が高まってから50年近くたっていますし、疾患概念や学問的な研究も進んだことで、非常に成熟しています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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