看護師僧侶「死にゆく人の心構えと接し方」

「主人は今日、何を食べてくれるのかしら」

玉置妙憂さん(C)日刊ゲンダイ

 買い物や熟睡もできない1日24時間の介護で、介護者が山積する疲労や苦しみ。できることなら介護から距離を置きたいと思う。

「介護から逃げ出す少しのチャンスがあったら逃げましょう。苦しい状況を耐え忍ぶ必要なんてありません。それよりも、介護しながらあなたの心の幸せを満たすような努力や工夫もしてみてはどうでしょうか」

 そう語る玉置さん自身も、つらい介護経験を持っている。

 ご主人が原発「大腸がん」の術後、5年後に再発し、すい臓がん、胆管がんに転移した。カメラマンの主人は再発後のがん治療を放棄し、余命の3年を仕事にかけたのである。通院、入院を拒否し、自宅で仕事をこなす主人の介護に、玉置さんはやがて介護を楽しむようになった。

 毎日の食事では、玉置さんは主人に5種類ほどの食事を作ってテーブルに並べた。

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玉置妙憂

玉置妙憂

東京都生まれ、53歳。専修大学法学部卒業後、法律事務所に勤務。長男の重い病気が動機になり30歳の時、看護師資格を取得。46歳の時に、がん闘病の主人を自宅でみとった後、高野山真言宗に得度した。臨床宗教師としても講演、執筆活動を行っている。「大慈学苑」主宰。

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