拡張障害型に対しては、決定的な治療法もまだ確立していないのが現状です。筋芽細胞シートを使って線維化してしまった心筋を元に戻す再生医療の研究が進んでいますが、すべてのケースに有効なわけではありません。一般的には、ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)やβ遮断薬といった心不全に有効とされている薬をうまく組み合わせて対処するくらいしか手だてがありません。バイパス手術などの治療を行っても、心筋が線維に置き換わっていってしまう状況を止められないのです。
■心筋が線維化する一因がわかってきた
先月、そうした現状を打破する手がかりになりそうな研究が報告されました。名古屋大学と国立循環器病センター研究所のグループが、心筋の線維化には線維芽細胞の細胞膜にある分子「メフリン」が大きく関わっていると明らかにしました。メフリンの減少が心筋の線維化を誘導して心臓を硬くしてしまい、拡張障害型の発症につながることがわかったのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」