がんと向き合い生きていく

「経済毒性」がん治療による経済的な副作用も考えるべき

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■個室料金のあり方も見直したほうがいい

 また、医療費は保険制度で緩和されるのですが、個人負担の「個室料金」はどうしたものかと疑問に思うことがあります。本来、同意書による同意の確認を行っていない場合や、患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合などでは、料金を求めてはならないことになっています。患者側もプライバシーの問題をはじめ、周りが気になって寝られないなど、いろいろな事情を抱えています。個室や4床室以下での差額ベッド料金は、病院によって違いますが、東京都内と地方でも大きく違うようです。控室があるような特別な個室は別として、狭い部屋でもホテル代よりはるかに高額なところもあります。個室料金の“あり方”をあらためて考えてみるべきではないでしょうか。

 病状によって入院期間が長くなるのは仕方ありません。しかし、高額な個室料を払っている患者は長期入院が可能で、一般の患者は早期退院を求められる……といった話を聞くことがあります。病院が「個室料金で稼がなければならない」という姿勢はどうも納得しかねることです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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