上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「冠動脈起始異常」は若い世代の突然死の大きな原因になる

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 去る7月、米メジャーリーグ、エンゼルスのタイラー・スカッグス投手が27歳の若さで急逝しました。後日に発表された情報によると、医療用麻薬とアルコールを摂取した後の嘔吐による窒息死とのことでした。

 トップクラスのプロ選手を含め、一般のアスリートでも若くして突然死したケースを耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。今回は薬物が一因でしたが、死因として少なくないのが心臓疾患です。全体的な頻度はそれほど多くはありませんが、ほとんど症状はなかったのに1回目の発作で突然死に至るような場合、「冠動脈起始異常」と「ブルガダ症候群」という心臓疾患が関係しているケースが多いと言われています。

 中でも、最近は冠動脈起始異常によって起こる致死性不整脈をよく目にするようになりました。心臓に栄養や酸素を送っている冠動脈が本来の場所とは違うところから出ている先天性奇形で、冠動脈が圧迫されやすくなることで、血流が急に途絶して再灌流障害を起こし、致死性不整脈を招きます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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