上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「冠動脈起始異常」は若い世代の突然死の大きな原因になる

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

■アスリートではない一般人でもリスクあり

 アスリートでなくても、その年代で冠動脈起始異常が突然死を引き起こすケースはあります。たとえば、中学生までは自覚症状もなく問題なく生活できていたのに、進学した高校が体育授業の中で長距離走などのスポーツに力を入れている学校で、急に運動量や負荷量が増えて心臓が耐えられなくなる……といった可能性も考えられます。生活環境が変われば運動量や負荷量も変わるので、一般の人でも冠動脈起始異常によるリスクはたくさんあるのです。

 もっとも、冠動脈起始異常はそれほど多い疾患ではありません。当院でも患者さんは年間で3人いるかいないか程度です。しかも、突然死のリスクがあるような起始異常は、冠動脈が出ているところが本来とは1センチほどずれていて、その幅の中でいちばん極端な箇所から出ているケースです。ミリ単位でほんの少しずれているとか、血流に問題が起こらないような合流の仕方をしていれば、一生そのままで問題ありません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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