われわれは、10代後半から20代くらいにかけて、運動する際に血圧が右肩上がりに上昇していきます。その年代は、体格は一人前になるものの、全身へ血液を送る心臓は専門的な心肺機能向上のトレーニングでも受けない限り追いついていないことがほとんどです。つまり、臓器と体格がアンバランスな状態といえます。そうしたタイミングに該当する年代で急に運動量や心臓の負荷量が増えると、冠動脈起始異常がある場合は血圧の上昇を心臓が受け止めきれなくなり、パンクしてしまうケースがあるのです。
冠動脈起始異常は、それまでほとんど自覚症状がありません。症状が表れ始める10代後半あたりの年代、中学校くらいまでは運動量や負荷量がそれほど多くないため、心臓がまだ受け止めきれるのです。
プロスポーツの世界で、突然、若い選手がトップレベルに躍り出るケースを目にしますが、多くは10代後半の高校生くらいの年齢です。中学生世代はまず見かけません。やはり10代後半から身体の機能が大人になってくるからでしょう。とはいえ、体格はまだ幼いわけですから、トップレベルの記録を出すためのトレーニングなどで運動量や負荷量が一気に増えると、冠動脈起始異常があれば心臓に致命的なトラブルが起こる危険があるのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」