後悔しない認知症

「ボケたね」と言われ「そうだね」と笑い合える環境作りが大切

写真はイメージ(提供写真)

「僕が告白して講演などで体験を伝えれば、普通に生活しているとわかってもらえる。(中略)僕の話から多くの人が理解してくれれば、認知症の人の環境にもプラスになる」(朝日新聞DIGITAL2018年3月16日)。

「最近ドライバーが飛ばなくなった」「老眼が進んだ」「耳が遠くなった」といった肉体的な老化現象については比較的すんなりと受け入れるものの、ことが認知症となるとそれを認めたがらない高齢者、その子どもが少なからずいる。これは本人にとっても子どもにとっても不幸なことだ。老化による脳の萎縮によって最終的には認知症症状が必ず起こる超高齢社会においては、認知症は誰もが直面する、いわば「人間の変化」に過ぎない。ここで紹介した2人の認知症の高齢者のように、自分の認知症を受け入れ、前向きに生きることが大切なのだ。本人も子どもも「機能消失」を嘆くのではなく「残存能力」を愛でること。その上で、親がやりたいことを機嫌よくやる、やらせる。それが認知症の進行を遅らせることにつながる。「ボケたね」という言葉に対して「確かにボケたね」と親が笑って応じられるような環境づくりを子どもは心掛けるべきなのだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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