世間ではよく「がんの手術はステージⅢまででステージⅣ(他臓器に遠隔転移している)は手術の対象外」といわれています。しかし大腸がんでは必ずしもそうではありません。
治療ガイドラインによれば、原発巣・転移巣ともに切除可能なら「原発巣の根治切除を行うとともに遠隔転移巣の切除を考慮する」となっています。また転移巣の切除が不可能でも「他の療法では制御困難な原発巣による症状があり、過大侵襲とならない切除であれば」原発巣の切除を強く推奨しています。
その場合、転移巣がまだ残っていますが、そちらは抗がん剤で叩くことになります。根治の可能性は低いものの、それなりの延命効果は期待できるようです。
転移先は肝臓がもっとも多く、次いで腹膜、肺の順です。原発巣を切除するのは、もちろん大腸がん手術の専門医ですが、肝転移や肺転移の切除は、それぞれの臓器の専門外科医が当たります。ただし、抗がん剤に関しては、大腸がんの細胞が転移先で増殖したのですから、大腸がんの処方に準じて行われます。

大腸がん<3>術後補助化学療法 使える抗がん剤が6種類に増
- 2019年11月15日

大腸がん<5>切除不能進行再発の抗がん剤治療は5段構え
- 2019年11月21日

永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。