上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

米国での「感染性心内膜炎」の増加は現代社会への警鐘

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 風邪や外傷で血液内に細菌が侵入して心臓内に感染巣をつくったり、腸管、皮膚、口腔内、鼻腔内といった体にすみ着いている「常在菌」が日和見感染を起こして感染性心内膜炎につながるケースもあります。虫歯で歯科治療を受け、ミュータンス菌や口腔内の常在菌が血管内に侵入して発症する例も少なくありません。

■細菌感染しやすい条件が揃ってしまった

 近年は、「卵円孔開存」という生まれつき右心房と左心房の間に小さな穴=卵円孔が開いている心臓の構造が、感染性心内膜炎と関わっていることがわかっています。右心房と左心房の間の穴を通して静脈血と動脈血が行き来して混ざり合い、静脈血に入り込んだ細菌が左心房に到達して弁に取りついてしまうリスクがアップするのです。

 また最近は、心臓の弁のうち三尖弁や僧帽弁のつくりが全体的に脆弱になってきている印象があります。それによってもともと少しだけ血液の逆流がある人が増えているため、血液内の細菌が心臓に感染しやすくなっていると考えられます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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