とりわけ高齢の女性に大動脈弁狭窄症が多く見られるのは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンの影響です。エストロゲンはさまざまな役割を担っていて、循環器や脂質代謝の機能を調節して心臓を保護する作用もそのひとつです。女性が50歳前後になって閉経するとエストロゲンが急激に減少し、血圧が不安定になったり動脈硬化を招いたりするなどして男性よりも強く弁の石灰化を促進させるのです。
ただ、こうした情報が一般に浸透していないこともあって、心臓に少し違和感があっても検査に行かない女性は少なくありません。きちんと診断されていないケースもたくさんあって、手術したほうがいい段階まで悪化している人でも、その10~15%程度しか手術が実施されていません。そのため、大動脈弁狭窄症で突然死してしまう女性も増えているのです。
■負担が少ない治療法が広まっている
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」