がんと向き合い生きていく

“効く”という根拠がない治療を勧めるわけにはいかない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ◇  ◇  ◇ 

 免疫療法は、長年たくさんの臨床試験が行われてきましたが、成功したものはありませんでした。近年になって、やっと免疫チェックポイント阻害薬や、白血病のCAR―T細胞を使ったがん免疫治療製剤が出てきたのです。そうした経緯もあって、Cさんが質問された治療法に対し、あれもダメ、これも勧めない――そう言い続けてしまいました。

 それを受けたCさんから「先生の勧める治療法はないのですか?」と尋ねられ、こう答えました。

「すみません。いまはあなたに勧める治療法はないのです。いま行われている臨床試験を探してみましょう。もし条件が合いそうなら、この診療情報提供書を持って、新薬などの治験や臨床試験を行っている病院を訪ねてみましょう」

 Cさんは、がんの拠点病院などに電話して聞いてみるといいます。しかし、もしCさんが入れる臨床試験がなければ、やはり治療法はないということになります。

3 / 5 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事