がんと向き合い生きていく

肺がんで亡くなった祖母の手にはめられた白い手袋には紐がつながれていた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Fさん(45歳・女性)はすでにご両親を亡くされていて、夫とは5年前に離婚。いまは小学2年生の息子と2人暮らしで、自宅近くのスーパーに勤めています。

 そんなFさんが住んでいるアパートから徒歩10分ほどのところに、Fさんの祖母Kさん(94歳)が元気にひとり暮らしをしていました。

 Fさんは週1回のペースで訪問して、野菜を持っていったり食べ物を冷蔵庫に補充するなど、あれこれ世話をしていました。しかし、ここ1カ月くらいKさんは食事の時にむせる症状が出て、食事の量が減ってきていました。

 ある夜、Kさんから急に「息苦しい」と電話があり、救急車で近くの病院に運ばれてそのまま入院。この時、左の肺に水がたまっていることが分かりました。

 翌日、500ミリリットルほど抜いた胸水の中にたくさんのがん細胞が見つかりました。そして、1週間後、Fさんは担当医からこう告げられました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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