医師は患者の命を救う。それが無理なら、苦しみを少しでも減らす努力をする。そのはずなのに、セカンドオピニオンに来られた患者に、正直に「治療法がない」と答えて、もっと苦しみを与えることになるのではないか?
一通り話を終えると、Kさんは「ありがとうございました。これからのことを考えてみます」と言われました。その言葉で、私はKさんに助けられたと思いました。このむごい告知が、Kさんがご自身の人生を考える、そのきっかけになってくれるのではないか。私自身が、勝手にそう解釈したがっていたようにも思います。
少しホッとした私は、「何かの時に、もし相談したいと思われたときがあったら」と、私の連絡先のメモ書きを渡しました。Kさんは、「え! 何かの時にまた相談に乗っていただけるのですか?」と言われ、診察室を後にされました。
しかし、あれから連絡はありません。Kさんに幸あれ。良い状態が続いてくれ。そう願っています。
がんと向き合い生きていく