さらに、どんな患者さんでも治療を受けられるというわけではなく、ある程度“選ばれた患者”が対象になると考えられます。第三者の細胞からつくられたiPS細胞を心筋細胞に分化させた心筋球を移植するには、免疫の型(ヒト白血球抗原=HLA)の一部を合わせなければなりません。型が合わないと、拒絶反応が起こってしまうからです。
そして、心筋球を注入する手術が終わってからは、一定期間、免疫抑制剤を使って拒絶反応を抑えます。この免疫抑制剤の薬効や副作用に対して耐えられる状態の患者さんでなければ、心筋細胞の移植はできないということです。重症心不全の患者さんは、薬を代謝する腎臓の機能が衰えているケースが多いので、対象となる患者さんはかなり絞られることになります。
もちろん、心筋を再生させる再生医療はまだ始まったばかりですし、決定的な治療法がなかった重症心不全の患者さんにとって大きな福音となる可能性があります。大いに期待しています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」