がんと向き合い生きていく

食事でがんが消える?肺がんと診断された放射線技師の感想

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Hさんは、あらためて「なんのことはない。これらは明らかに抗がん剤治療や放射線治療が効いての結果だろう」と思いました。

 もちろん、レモン、ニンジン、りんごはどれも体によい食品です。しかし、レモンで、ニンジンで、りんごで「がんが消えた!」なんて、どうして書くのだろう? と、不思議にさえ思いました。

■コーヒーの浣腸をすすめる本も

 しばらくしてから帰宅した妻に、Hさんは「あの本、買ってきたの?」とたずねました。すると、こんな答えが返ってきました。

「お友達が貸してくれたのよ。旦那さんががんになった時に買ったみたい。旦那さんが亡くなって3年になるし、もういらないからって。たくさん貸してくれたんだけど、変な本が多いのよ。見出しを見るとビックリするわよね。新鮮な野菜でがんが消えるって、それなら野菜をいつもたくさん食べているお父さんにがんができるなんてありえないよね」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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