最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

主役は患者 食べるものも生活リズムもすべて好きなように

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 入院先の病院から在宅医療の導入を勧められ切り替えたのですが、入院中はずっと寝たままで、テレビを見ることもなかったといいます。ところが退院して家に帰ったら、テレビで日時を確認したり、食べたいもののリクエストを出したり。訪問診療のスタッフが来る日には、ヒゲをそり、ワイシャツを着て、ピシッと身支度を整える――。

 入院していてはこのような生活スタイルは望めません。この患者さんの場合、在宅医療に切り替えたことで、患者さん自身の中に眠っていた生活を主体的に送ろうとする積極的な気持ちを取り戻せたのでしょう。

 その後、妹さんの強い要望で施設に入所されました。しかし、たとえ一時的だとしても、療養に対しても、生きることに対しても、積極的な気持ちを持てるようになった在宅医療の期間は、患者さんにとってさぞかし貴重で有意義な時間だったのではと考えるのです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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