みんなの眼科教室 教えて清澤先生

目が違う?犬は可愛いのに狼はそう思えないのはどうしてか

写真はイメージ

 実際に、この論文の要旨には次のように書かれていました。

「家畜化はオオカミを犬に変え、その行動と解剖学的構造の両方を変えました。ここでは、わずか3・3万年の家畜化が人間との顔のコミュニケーションのために犬の顔の筋肉解剖学を変えたことを示す。犬とオオカミの頭の解剖により、内側の眉毛を激しく上げる原因となる筋肉は、犬には均一に存在するが、オオカミには存在しないことを示す。また、犬とオオカミから収集された行動データは、犬がオオカミよりもかなり頻繁に、そしてより高い強度で眉の動きを生み出し、最高強度の動きが犬によってのみ生み出されることを示しています。興味深いことに、この動きは子供の顔を想起させ、人間が悲しんでいるときに作り出す表現にも似ているため、人間の共感を引き起こす可能性があります。犬の表情豊かな眉毛は、人間の好みに基づいた選択の結果であると仮定できるのです」

 犬が人とのコミュニケーションのために長い年月をかけて顔の筋肉を変え、人間好みの表情を作ったとはすごい話です。 よく「目は口ほどに物を言う」といわれますが、まさしくそうで、目の動きがある意味、最高のコミュニケーション手段だということでしょうか。

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清澤源弘

清澤源弘

1953年、長野県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院修了。86年、仏原子力庁、翌年に米ペンシルベニア大学並びにウイリス眼科病院に留学。92年、東京医科歯科大眼科助教授。2005-2021年清澤眼科院長。2021年11月自由が丘清澤眼科を新たに開院。日本眼科学会専門医、日本眼科医会学術部委員、日本神経眼科学会名誉会員など。

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