女性の不妊治療で何が行われているのか

SNSでの精子提供の急増と個人間の取引に潜む大きなリスク

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 このように提供精子を用いて治療を受けられる施設が減っている中で、SNSなどによる個人間での精子提供が増加しています。Twitterで「精子ドナー」と検索すると、多数の匿名精子提供者がヒットします。提供者のほとんどは無償で精子を提供しており、その提供方法は、採取した精子を渡し注射筒(シリンジ)を使って自分で腟内に注入するシリンジ法だけでなく、中には直接、提供者と性交渉を行って精子提供を受けている方もいるようです。このような形態の精子提供はSNSだけでなく、最近では精子希望者と精子提供者を結ぶマッチングサイトもでてきています。

 通常、医療機関では感染症について十分にチェックを行ってから精子を提供しています。慶應義塾大学病院では提供された精子はいったん凍結し、感染直後ではすぐに陽性とならない場合があるため、半年間に渡って2回提供者の感染症をチェックし、陰性が確認された提供者の精子のみを使用しています。また、人工授精の際に雑菌などが一緒に入らないよう提供された精液は洗浄を行います。

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小川誠司

小川誠司

1978年、兵庫県生まれ。2006年名古屋市立大学医学部を卒業。卒後研修終了後に慶應義塾大学産科婦人科学教室へ入局。2010年慶應義塾大学大学院へ進学。2014年慶應義塾大学産婦人科助教。2019年那須赤十字病院副部長。2020年仙台ARTクリニックに入職。2021年より現職。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。

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