最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

在宅医療に不信感を抱く奥さまが心を開いてくれた理由は…

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 患者さんやご家族の中には、自分の意見や主張、希望を積極的に伝えない人もいます。それ以前に、在宅医療に対して「本当に大丈夫?」と不信感を抱いている人もいます。理由はさまざまですが、よくあるのは、自分の家に見ず知らずの他人が訪れることへの拒否反応でしょう。

 だからこそ私たちは、根気よく対面し、十分なコミュニケーションに努めます。

 患者さんやご家族が望んでいるテーラーメードな医療はなんなのか? 会話の中から探っていくわけですが、これが在宅医療を進める上で、重要な工程だと考えています。

 最初は違和感のあった空気が、徐々に変わっていく。往診を続けるうちに私たちの考えが理解され、もろもろの作業が、患者さんとご家族、私たちとの共同作業へと変わっていく。在宅医療本来の姿へとなっていくのです。

 かつて、そんなコミュニケーションが困難だった患者さんがいました。その方は63歳の男性で、奥さまと2人暮らし。末期の胆管がんで、すでにリンパ節への転移もある状態でした。私たちの在宅医療を受ける前、病院から紹介された別のクリニックの療養を受けており、その時の体験からか奥さまが在宅医療の医師に対して不信感を抱いていました。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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