がんと向き合い生きていく

「中皮腫」の治療は免疫チェックポイント阻害薬が活躍する時代へ

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■従来の抗がん剤より生存期間が改善

 薬物療法は長年、抗がん剤の「シスプラチン」と「ペメトレキセド」の併用が初回治療の選択肢とされてきました。それが最近、免疫チェックポイント阻害薬「ニボルマブ」と「イピリムマブ」の併用療法を、従来の抗がん剤併用療法と比較した第3相試験で全生存期間の改善を示し、期待されています。

 リンパ球のT細胞にはがん細胞を排除する働きがあり、これにブレーキをかける分子を「免疫チェックポイント」と呼びます。T細胞の表面には「異物を攻撃するな」という信号を受けるアンテナがあります。一方、がん細胞にもアンテナがあり、T細胞のアンテナに結合して「異物を攻撃するな」という信号を送ります。するとT細胞にブレーキがかかり、がん細胞は排除されなくなってしまいます。免疫チェックポイント阻害薬は、T細胞やがん細胞のアンテナに作用して、免疫にブレーキがかかるのを防ぐのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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