上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

サッカー選手に相次ぐ心臓トラブルの一因は「冠動脈起始異常」の可能性

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 起始異常があっても、冠動脈が出ているところが本来とはミリ単位でほんの少しずれているだけだったり、血流に問題が起こらないような合流の仕方をしていれば、大きな問題はないといえます。突然死のリスクがある起始異常は、冠動脈が出ているところが1~1.5センチ程度ずれていて、その幅の中でいちばん極端な箇所から出ているような場合です。

 そうしたハイリスクな起始異常があっても、普段は自覚症状がない人がほとんどです。しかし、加齢や身体バランスの変化などが生じ、運動量や心臓の負荷量が増えたり冠動脈自体の硬化が起きたりすると、血圧の上昇により急に心筋への血流が途絶するため、パンクしてしまうケースがあります。

■血圧の急上昇が致死的な不整脈につながる

 先日、右冠動脈の起始異常がある48歳の男性を手術した際、術中に血圧を上げ、冠動脈の血流を測定すると、やはり血流が急激に減る状態が確認できました。つまり、普段の安静時は症状はなく、血圧が上がったときに何らかの症状が出るということです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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