がんと向き合い生きていく

強い抗がん剤は口内炎ができやすい 治療前の口腔ケアが大切

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 話は変わります。以前、一緒に働いていた看護師長のFさん(50代・女性)のことです。

 いつも笑顔で、仕事の様子などいろいろ話してくれるのですが、その日は違っていました。

「口腔科で診ていただいて、『アフタ性口内炎』と言われました。ステロイド軟こうを処方されて使っているんですけど、なかなか治らないんです。もう2週間も経ちます」

 確かに、Fさんの下口唇の内側には径1センチくらいの白苔(アフタ)があり、周りが赤く潰瘍となっています。私は「自分も時々そうなるよ。しみて嫌だよね。ん~、早く治るといいね」と答えました。

 それから2週間後、Fさんの表情はまだ曇っています。

「先生、あの口内炎は治ったんだけど、今度は左側にできてきてまた痛むんです。もう嫌ですね」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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