がんと向き合い生きていく

強い抗がん剤は口内炎ができやすい 治療前の口腔ケアが大切

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 担当医は、あまりのひどさに食事摂取は無理と判断し、鼻腔から管を入れて経管栄養にしてくれました。鼻から挿入した管は頬に固定し、数日間そのままでした。

 夜、イヤホンで聞くラジオから、ザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」が流れていました。

「おらは死んじまっただ~」

 そう繰り返される歌詞を聞いて、涙が出ました。

 数日後、口内炎が良くなってきて、管を抜いてもらった時のすっきりした気持ちは、今でも忘れられません。

 口内炎はいろいろな原因で起こり、その程度もさまざまです。口腔粘膜への歯の物理的刺激、ヘルペスウイルス、カンジダ菌、たばこのニコチン、アレルギー、ストレス、睡眠不足、ビタミン不足など多岐にわたり、原因が分からないこともあります。

 予防のためには、歯磨きやうがいなど、口腔粘膜を健康に保っておきたいものです。もし、強い抗がん剤治療を行う時は、重篤な口内炎にならないために、前もって齲歯(虫歯)などを口腔科でチェックしてもらい、口腔ケアを行っておくことが大切です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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