がんと向き合い生きていく

強い抗がん剤は口内炎ができやすい 治療前の口腔ケアが大切

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 さらに1カ月後、廊下でFさんと会いました。今度は晴れ晴れとした笑顔です。

「口内炎はすっかり治りました。よかったです。私、先週から看護管理室ではなく、病棟勤務になりました。やっぱり職員の管理よりも、患者さんのそばが性に合っている気がします」

 Fさんにとって、看護管理室の勤務はストレスが多かったのではないか。私は「Fさんの口内炎は『心因性』だったのかもしれないな」と思いました。

■ひどい口内炎で食事ができなくなり…

 口内炎では私自身、つらい思い出があります。学生時代、高熱が出て1カ月ほど入院しました。末梢血液に異型リンパ球がたくさん出て白血病が疑われました。病気は幸いウイルス感染症と分かったのですが、この時、抗生剤の投与が続いたせいもあったのかもしれません。口内炎が口腔全体に広がり、痛みでまったく食べられなくなってしまいました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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