がんと向き合い生きていく

個々のがんに合った薬剤「抗体薬物複合体」の開発が進んでいる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 男性は、同院血液内科に入院して化学療法を行いました。悪性リンパ腫に対する標準的な治療は、CHOP療法(シクロフォスファミド《商品名エンドキサン》、ドキソルビシン《同アドリアシン》、ビンクリスチン《同オンコビン》、プレドニゾロン《同プレドニン》の4剤を使う化学療法)を参考にして、オンコビンの代わりに「アドセトリス」という抗体薬物複合体を使う治療となりました。

 これを1回実施したところ、表在リンパ節腫大は消え、発熱もなくなったのです。男性はとても元気になって、1カ月後に2クール目を行うことになりました。

 この男性のように、悪性リンパ腫の種類によっては、がん細胞の表面にCD30というタンパク質の発現が見られることがあります。このCD30を標的として結びつくように遺伝子工学の手法でモノクローナル抗体がつくられ、その抗体に抗がん剤を組み合わせたのがアドセトリスです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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