がんと向き合い生きていく

個々のがんに合った薬剤「抗体薬物複合体」の開発が進んでいる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 一般名は「ブレンツキシマブベドチン(微小管阻害薬結合抗CD30モノクローナル抗体)」で、つまりがん細胞に結合する抗体と抗がん剤を組み合わせた抗体薬物複合体なのです。CD30を目印にしてがん細胞にくっつき、細胞の中に取り込まれ、細胞の中で抗がん剤がDNAを障害しダメージを与えます。同時に投与されたドキソルビシン、シクロフォスファミドは従来通りの抗がん剤で、特別にがん細胞だけを標的として作用するわけではありません。

■特殊なタンパク質に対する免疫を利用

 抗体薬物複合体としてつくられた薬剤は、ほかにHER2を標的とした「エンハーツ」(一般名トラスツズマブデルクステカン)があります。乳がんや胃がんに使われます。がん細胞の細胞膜上に発現するHER2に結合し、細胞内に取り込まれた後にカンプトテシン誘導体(MAAA-1181a)がDNA傷害作用とアポトーシス誘導作用を示すことなどにより、がんの増殖を抑制すると考えられています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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