上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓手術を受ける患者に腎機能障害があるケースが増えている

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 CKDは、「血清クレアチニン値」と「eGFR(推算糸球体濾過量)」という2つの指標と、「尿中のタンパク質」から評価します。重症度に応じて6段階に分類され、ステージ1と2は正常またはたまに腎機能の数値が悪化する軽度低下、ステージ3aと3bでは本格的な治療が検討されます。悪化してステージ4になると高度低下と呼ばれる重症のCKD、ステージ5は末期腎不全で人工透析を行う必要があります。

■ステージ2~3のCKDが目立つ

 心臓手術が検討される患者さんにCKDがある場合、ステージ2か3の人が多い印象です。心臓疾患の治療は、まずは循環器内科で行われることがほとんどですが、患者さんのステージが2か3の段階になると、手術を受けるために心臓血管外科に回ってくるケースが多いのです。

 たとえば、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患では、循環器内科でカテーテルを使った冠動脈のステント治療が実施されます。その際、血管の狭窄の状態を確認するために使われる造影剤は、腎臓への血流障害や尿細管障害を起こし、腎機能を悪化させてしまいます。そうした治療によって、患者さんのCKDのステージが2から3に進んでしまったり、3が4になりかけているような場合、良心的な循環器内科医は、その時点で造影剤によるさらなる腎機能の悪化を予測し、外科手術を選択するのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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