上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

腎機能が低下している人は腎臓内科医がいる病院で手術を

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 ほかにもいくつかの降圧剤は慎重投与となっていて、腎機能が悪い人に対しては投与量をしっかりとコントロールする必要があります。また、近年はあまり使われませんが、強心薬のジギタリスなどは、腎機能が悪化している場合はGFR(糸球体濾過量)を確認しながら、投与量を調整しなければなりません。

 このように心臓の治療で使われる薬が制限されることで、CKDがあると心臓の管理が不十分になり、悪循環に陥ってしまうのです。

■専門医はより細やかな管理ができる

 実際、心臓手術では腎臓にトラブルがある人が増えています。単独の冠動脈バイパス手術だけで見ると、全体の6~7%は人工透析を受けている患者さんです。また、CKDがある患者さんは全体の12~13%を占めています。

 かつては、人工透析患者の手術はしないという医療機関も少なくありませんでした。手術中は、血圧が大きく変化したり、人工心肺装置の使用で出血が多くなり大量輸血が必要になったりしたからです。しかし近年は、すべての腎機能障害例で通常通りに手術が実施されるようになっています。手術中に腎臓を保護して負担を減らしながら、手術を行う方法が進歩してきたためです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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