上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓トラブルがある人は「熱中症」が重症になりやすい

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 たとえば、普段から降圧剤で血圧を管理している人が発熱したときに服用すると、過剰投与した状態と同じように薬が効きすぎてしまい、急激に血圧が低下してショック状態になるケースがあります。血圧が一気に下がると、脈拍が減ってそのまま意識を失ったり、心臓が止まってしまう場合もあります。熱中症で体温が異常に上昇している状況でも、降圧剤の服用で同じことが起こる危険があるのです。

 また、糖尿病で血糖を下げる薬を使っている人では、熱中症の脱水や体温上昇によって薬が効きすぎると低血糖を起こします。血糖が30㎎/デシリットル以下になると、けいれんや昏睡状態に陥り、治療が遅れれば命に関わります。ほかにも、低血糖によって、狭心症、心筋梗塞、不整脈といった心臓疾患を発症したり、悪化するケースも報告されています。

 逆に、脱水や体温の異常上昇によって薬の効きが悪くなるほうへ作用すると、急激な高血糖を来す「ケトアシドーシス」につながる危険もあります。脱水による喉の渇き、血圧低下、頻脈、吐き気、倦怠感などが生じ、悪化すると呼吸困難や意識障害などが起こり、そのまま腎不全を招くケースもある深刻な病態です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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