老親・家族 在宅での看取り方

自宅での療養だから好きなものを好きなように食べられる

写真はイメージ

「がん治療を積極的に行ってこなかったの。自分が嫌だと思ったことはしたくないのよ。残りの少ない人生も、自分の思う通りに過ごしたいわ」

 そうさらりとおっしゃいます。

 彼女はこれまでの人生を話してくれました。若い時分に両親の反対を押し切って渡米。結婚し、3人のお子さんに恵まれたものの離婚。3年前、乳がんと診断されたのを機に、すでに成人している長男を元夫のところへ残し、16歳の次男と20歳の長女と共に日本へ戻ってきたそうです。

 かつてはアメリカ行きを反対した両親ですが、娘を温かく受け入れ、現在は両親、彼女、2人の子供の5人暮らし。

 昔から食べることが大好きだったという娘さんに対し、お母さまの願いは「できるだけ娘の好きなものを食べさせてあげたい」というもの。

「体調はどうですか?」と聞くと、「お腹が痛くてご飯が食べられないのでつらい。食欲はあるんですけど、食べるとお腹が張っちゃって」との答え。お母さまが「(娘が)がんに効く料理を作ってくれない、って言うんですけど、私も難しくて」。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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