老親・家族 在宅での看取り方

自宅での療養だから好きなものを好きなように食べられる

写真はイメージ

 診療のたびに出てくるのは、食べ物に関する質問や会話です。

「甘くない流動食みたいなものはありますか? 甘いものが苦手で」「今日は小さなおにぎりを1つだけで、昨夜も食べられなかった」「昨日はピザを食べたいと娘が言っていたんですよ」

 その都度私は、「食べられるものなら、何を食べてもいいですよ」「量を食べるとお腹がすぐにいっぱいになってしまうから、唐揚げ1個を食べるとか、アイスクリームを食べるとか。ジュースを寒天で固めるのもいいですね」などとお話しします。

 好きな料理の話をしていると、お顔もリラックスした顔になりますし、笑いもこぼれます。会話だけ聞いていると、末期がんの患者さんとそのご家族の会話とは思えないほど明るいのです。

 しかし、決して予後がいいとは言えない状況です。患者さんにお母さまの手料理を目いっぱい味わって欲しい。そう願うばかりです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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