老親・家族 在宅での看取り方

近づく最期…患者への一番の治療は家族がそばにいること

写真はイメージ(C)PIXTA

「予後が何カ月とか病院では詳しい話は聞いていないんです。ただ、とにかくもう治療はできないと言われました。病院で痛みを和らげたりする緩和ケアも考えたのですが、本人の希望で在宅にしました。ベッドが自宅に入ったのは昨日。結構バタバタでした」

 さっそく採血などによる検査を実施。肝臓および腎臓の状態が著しく悪くなっており、具体的な予後ははっきりとは申し上げることはできなかったのですが、その時点で長くても週単位。あるいは急にということもあると、娘さんにだけお伝えしました。

「今一番つらいのはどこです?」(私)

「だるさですね。腰の近くも痛いですね」(患者さん)

 療養初日はこのように患者さんとの会話もできていましたが、2日、3日と日にちを重ねるうちに怪しくなっていきます。

「これからは会話がはっきりできないこともあったりしますが、ひとつの目安がおしっこの量ですね。減ってきてほとんど出なくなります。そして呼吸の状態が変わってきます。そばから見ると苦しそうに見えてかわいそうだなって思うんですが、そういう時は意外とご本人は苦しくないんですね。今の患者さんにとって一番の治療は、家族がそばにいることです。できるだけ一緒にいてあげることが大事かなと思います」

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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