がんと向き合い生きていく

ステージ4の前立腺がんでも抗がん剤が劇的に効くことも

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■PSA値が急激に下がった

 そして、その翌週から3週間に1回のドセタキセルという抗がん剤の点滴治療と、ホルモン療法が開始されました。幸い、治療開始から1カ月後のPSA値は急激に下がり、2カ月後のCT検査では肺転移の影も明らかに小さくなっていました。ドセタキセルの点滴は合計6回行われ、現在はホルモン療法を続けています。PSA値は正常値となり、肺の転移はほとんど消えています。

 あれから1年過ぎた今では、背中の痛みもなく、ウソのように元気な毎日です。

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 前立腺がんは、限局期(がんが転移していない状態)の場合は「監視療法」といって、治療せずに経過をみることもあります。病期によって、手術による前立腺全摘除術、放射線治療、ホルモン療法、抗がん剤治療などが行われます。

 進行している前立腺がんでも、この男性のように劇的に効くことも実はまれではありません。多くの場合で薬物治療は有効ですが、どのくらいの期間、何年効いてくれるのか、予後は個人個人でさまざまです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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