がんと向き合い生きていく

恐山と玉川温泉には“救い”を求める人々が集まっていた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 聞くところによれば、岩から微量の放射線が出ているらしいのです。これが、がんをやっつけるのだと言われているようです。

 がんに効くとはとても考えられないのですが、ござやシートを包んで持ち、あるいは肩に掛けて、テントの方に向かう人、戻ってくる人の列がありました。楽しんでいるのなら良いのですが、頭を下げて前かがみになっている方々は悲愴な気持ちでおられるのではないか……と複雑な思いに駆られました。

 駐車場に止まっているクルマのナンバーを見ると、全国各地から訪れていることを示していました。

 私はこの無言の列を遠くから眺めていました。なんとなく科学からは遠く離れているように思います。途中の紅葉は、この世のものとは思えないほどきれいでした。

 北東北地方にも不思議に思える場所がたくさんあります。50年もたっていますが、昔のままなのか。コロナ流行が収まったら、恐山や玉川温泉をできればまた訪れたいと思っています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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