がんと向き合い生きていく

恐山と玉川温泉には“救い”を求める人々が集まっていた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 不思議と、当時はやった浅川マキさんの「赤い橋」という歌が思い出されます。

 恐山は、それなりの雰囲気がある所で、たとえ車に乗っていても、夜は怖くてひとりで行く気にはなれません。あの世とこの世をつなぐ所なのです。少なくとも、風景、空気はそう思わせるに十分な場所だと感じました。恐山には温泉もあるようですが、私は入ったことがありません。

■がんに効くとは思えないが…

 恐山から約250キロ離れた秋田県に玉川温泉があります。

 ここでは岩の間から黄色い硫黄が吹き出ています。以前訪ねた時は、がんの患者さんが訪れる温泉として有名で、テレビでも放送されたようです。「末期がんが治った」など、いろいろと話題になることから、足を運ぶ方がいるのだと思いました。

 入浴できるお湯の温度では、がんは消滅しません。それでも、私が訪ねた時も、たくさんのがん患者さんかと思われる方が行列をつくって岩盤浴ができるテントに向かっている姿が見られました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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