認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

老親の「動こう」「楽しもう」という気持ちを尊重しサポートしよう

ディズニーランドに連れて行ってあげれば良かった…(C)共同通信社

 女性はしばらく、祖母がディズニーランドへ行きたがっていたことを忘れていたそうです。でも自分が年を重ねるにつれ、「あのときなぜ、反対を無視して、強引にディズニーランドへ行かなかったんだろう。まだ、おばあちゃんは元気だったのに」と思い返すようになりました。母親が反対した気持ちもわかる。何かあったらどうするんだと、先回りして心配する気持ちもわかる。

 でも、それでも、おばあちゃんは万が一転んだとしても、孫と、念願のディズニーランドへ行けた方がうれしかったんじゃないか--。

■何かあったとしても「行動しないで後悔」より生きている証し

 実は、私も今は亡くなった両親に対して同じ後悔の念を抱いています。子供の立場、ましてや孫の立場になると、高齢である親(祖父母)の負担を極力取り除きたいと思いますよね。足腰が弱っているのだから、無理をさせたくない。転んで骨折したら、そのまま寝たきりになる可能性も高い。万が一の危険が考えられる行動はやめさせたい、と。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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