がんと向き合い生きていく

治療ガイドラインはエビデンス=科学的な証拠を基につくられる

写真はイメージ

 ただ、これはあくまで統計上の結果で、個々の、その患者に本当に効くかどうかは、実施してみなければ分からないのは事実です。しかし以上のことから、胃がんに対して抗がん剤治療を行うことは、科学的根拠=エビデンスがあるとされたわけです。その後、胃がんに対して効果のある薬剤がどんどん開発され、どんな胃がんに対して、どのような薬が効果的かも分かってきたのです。

■どんな治療を受けるかは患者が決める

 エビデンスとして高いレベルとされるのは、信頼できる複数のランダム化比較試験(いわば、くじ引き試験)で同じ結果を示している場合です。次のレベルは比較試験のない研究結果があること、レベルの低いものとしては臨床経験に基づくものなどとされています。

 これらのエビデンスが「治療ガイドライン」の基となっています。担当医は、ガイドラインをベースにして患者に最も推奨する治療法を提示します。もちろん、患者個々の体の状態、年齢、リスクなどを考慮し、最も勧められる治療法を説明するのです。

3 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事