老親・家族 在宅での看取り方

がんの末期に生じる痛みは「在宅」でもしっかりコントロールする

「普通の日常を過ごす」ことが大事(C)日刊ゲンダイ

「どういう状態なのかはわからなくて。慣れている方ならいいかもしれないんですけど」(妻)

「慣れている方なんかはいらっしゃらないですよ」(私)

 看取りに慣れていないのはどなたでもそうです。その不安を皮をはぐように一枚ずつ、ゆっくり一緒に取り除いていくことも在宅医療では大切な仕事。奥さまとお話ししてそのことを改めて考えさせられました。

 そして奥さまにお伝えしました。

 人生に1度しかないお別れの期間です。言いたいことを全部言えたな、できたなって後から振り返って言えるように過ごしていただければ100点ですから──。

 それに対して「特別なことはせずに、普通の日常を過ごそうと思っています」とおっしゃる奥さま。なにげない日常が、患者さんとご家族にとって一番人生で特別な時間であり、それをサポートするのもまた在宅医療の役割だということも、改めて気づきました。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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