「一生飲まなきゃいけない薬はない」 高齢者の薬の正しい飲み方とやめ方 在宅医療の名医が語る

「一生飲まなくてはいけない薬」はない

 しろひげ在宅診療所では、「病気」を診るだけではなく「生活」を見ながら薬の調整をするという。病気だけを考慮すると、1日3回服薬の薬がベストであったとしても、患者の介護環境や服薬管理を考えた場合、1日1回の薬をあえて選択することもあるという。

「飲みやすい薬の錠形も大切です。飲み込みが悪い高齢者の方に、大きな錠剤を処方したり、錠数が多い薬を処方しても、結果として飲めなかったり、飲み込むときにむせ込んだりすることで、服薬に対して抵抗感が出てしまいます。外来通院の患者では『飲めていない』『飲んでいない』ことを医師に言いづらく、医師は『飲めている』という前提で薬を継続したり増量してしまいます」

 在宅診療で、実際の服薬環境や残薬を確認すると、押し入れからどっさりと病院で断りきれなかった薬が出てくることがあるという。

「いい薬、病気に対して効く薬、という医師の価値基準だけで処方するのではなく、本人や家族が納得して服薬ができる薬をしっかりと選んであげることが大切です。いくらいい薬でも飲めなければ絶対に効果が出ませんし、無理に飲んで薬を詰まらせたり、心不全の患者が大量の薬を飲むために水分を取りすぎてむくみが強くなったり、心臓への負荷が高まり、患者にとってマイナスになることもありうるのです」

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