たとえば糖尿病に対しても、若い頃から糖尿病治療薬を飲んでいる人が家や病院でしっかりと血糖値を確認しないまま漫然と薬を飲み続け、低血糖で病院に搬送されるケースも少なくないという。
加齢に伴う変化や他の病気が合併することで食生活が根本的に変化しているにもかかわらず、診察している医師が「糖尿病の専門ではない」という理由で血液検査を十分に確認しないまま、元々飲んでいた薬を継続してしまうケースもある。
「どのような薬であっても『一生飲まなくてはいけない薬』はない。その薬の必要性を『医師に考えてもらう』のではなく、一番自分の体のことがわかっている『自分自身でしっかりと考える』習慣を身につけることが大切です」
若い頃は運動や食事などで自分の健康を周りに合わせることが可能だ。しかし、高齢になればなるほど持って生まれた「素」の自分が出てくる。だからこそ、高齢者の医療はパーソナルな治療でなければならない。それには患者自身が自分の症状としっかり向き合い、正しく迅速に医療関係者に伝える「言葉」を学ぶ必要がある。そうでなければ、飲む必要のない薬を一生飲む羽目になりかねない。