老親・家族 在宅での看取り方

病状が厳しいからこそ、自宅に戻って家族と一緒に過ごしたい

写真はイメージ

 在宅医療を始めると、もう病院には戻ることはできない、退路を断って在宅医療を始める覚悟でなければならない──。こう思っている方がよくいますが、そうではありません。レスパイト入院に限らず、やっぱり病院がよいとなれば、いつでも入院に切り替えられるのです。

 一方、余命を告げられた患者さんの中には、せめて年末年始の残された大切な時間を自宅で過ごそうと、あえてこのタイミングで在宅医療を開始される方もいます。

 その患者さんは、肺がんの末期で脳へも転移した状態の多発脳転移と、肺に空気が入らず、酸素を血液に取り込む効率が低下し呼吸困難を生じる無気肺を患う、旦那さんと2人暮らしの65歳の女性の方でした。

 病状としてはかなり厳しい。ご本人、ご家族ともに、それを十分に理解していました。旦那さんと近くに住む娘さんが相談し、お正月を前に、家に帰らせてあげたいとなったのでした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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